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子育て心理学 赤ちゃんの行動を決める「社会的参照」って何?

ふーちゃん
うちの子は転んでしまうと大声で泣くの。でも友人の子は全然泣かなかったわ。やっぱり性格の違いなのかしらね。
イワネン
「社会的参照」というものが関係しているかもしれませんよ。
ふーちゃん
シャカイテキサンショウ? なあに、それ?
イワネン
「赤ちゃんは人の反応を見て自分の行動を決めていることがあるようです。詳しいことは今回も発達心理学の専門家に聞いてみましょう。お話をいただくのは法政大学文学部心理学科の渡辺弥生先生です。

「この子は怒りっぽい」「この子は泣き虫だから…」のほとんどは親の思い込み!?

子育て心理学 赤ちゃんの行動を決める「社会的参照」って何?

赤ちゃんが表情豊かになってきたり、さまざまな行動を起こすようになったりすると、親はそこに赤ちゃんの性格を見出そうとすることがあります。
他人のオモチャを奪ってしまうことが続くと「この子は乱暴な性格ね」、立て続けに大泣きする出来事があると「この子は泣き虫だから」と悩むこともあるかもしれません。

けれど、親が「性格」だと思っているものは思い込みが多いものです。
たいてい、自分の経験やその子のきょうだい、よその家のお子様と比較して、その子の性格を決めつけることになっています。本来の「性格」とよばれるものは、赤ちゃんの時に決まるものではありません。また、たくさんのサンプルをもとに科学的につくられた検査などで測られるものです。つまり、非常に少ない比較対象からその子の性格だと思うものを決めてしまっているのです。

お子様の性格を決めつけてしまうことは、お子様の生育に良くない影響をもたらすことがあります。「この子は乱暴な性格だから」と決めつけてしまうと、お子様がそれを背負い込みすぎて心の重荷になってしまうことがあるからです。また一度付けられたレッテルは、なかなか剥がすことが難しく、自信を失わせてしまいます。親自身もそこばかり気になり、いいところを見落としてしまいます。

まねが上手な赤ちゃんは、物事に対する反応もまねをする

では、なぜ怒りんぼうさんとそうでない子がいるのでしょう。
それにはまず「模倣」と呼ばれるものの影響があるかもしれません。

人間は模倣(まねごと)がとっても上手な生き物です。
生まれてすぐの赤ちゃんであっても、親が「べーっ」と舌を出すとまねをして舌を出すことがわかっています。言葉を発するのには時間がかかりますが、簡単なダンスなどぱっと見て記憶できるような動きは比較的すぐに覚えてマネをするようになります。ですから、周りの大人がイライラしたりカッカしていると、その様子を見て同じように怒りんぼうの行動を模倣してしまいます。

ただし、こうした赤ちゃんの模倣をする力は、良い行動を学ぶ上でとても大切です。生活習慣の大半は親や周りの人の行動をよーく観察してマネをすることでできるようになるからです。食べることも、トイレへ行くことも、赤ちゃんはまねごとによって覚えていきます。つまり赤ちゃんに学ばせたいことがある場合は、ただ言葉だけではなく、親がモデルになってやり方を見せて、赤ちゃんにまねをさせていくといいわけですね。

愛着を持っている相手の反応を見ている

模倣とは別の力として、赤ちゃんは、親の行動を参照して物事の善悪などを判断するところがあります。これが社会的参照です。
例えば、赤ちゃんが遊んでいて転んでしまったとき。驚いた親が「きゃー大変!大丈夫!」と大声を出せば赤ちゃんは「これは大変なことが起こったのだ」と思い、さらに大泣きします。しかし親が笑って「大丈夫、大丈夫!」と落ち着いている様子を示すと、赤ちゃんは「大丈夫なんだ」と感じ、泣かずに立ち上がったりします。赤ちゃん自身は、まだいろいろなことの判断を自分ですることは難しいので、信頼する親の反応を見て、物事の良し悪しを判断するところがあるのです。

赤ちゃんは親が気に入っているもので遊ぶ

子育て心理学 赤ちゃんの行動を決める「社会的参照」って何?

赤ちゃんが社会的参照をする相手は、たいてい赤ちゃんが愛着を持っている人です。
日頃お世話をしていて愛着を持っている相手がお母さんの場合は、赤ちゃんはいつも気にしていて何をしていてもお母さんの方をチラチラと見ているものです。何かをしている時にお母さんがニコニコしていると、そのリアクションを見て安心して遊べるものなのです。

例えば、赤ちゃんが青いボールで遊んでいるとします。それをみたお母さんがニコニコしていると、赤ちゃんはそればかりで遊ぶようになります。一方で、黒いボールで遊んだときにお母さんが嫌な顔をすると赤ちゃんは黒いボールでは遊ばなくなるくらい、お母さんの仕草や態度を手がかりに、外の世界の好みや安全かどうかなどを理解していくところがあるのです。

注意をひきたい赤ちゃん

一方で、赤ちゃんは親が嫌がるイタズラをするときがありますよね。なぜでしょう。イタズラをした時は、たいていお母さんは大げさに「ダメダメ」といった反応をします。これは、赤ちゃんからすると、実は嬉しいことであったりします。赤ちゃんは、いつも自分に関心を向けてほしいからです。赤ちゃんが安全なもので遊んでいるとき、親は安心しきってあまり興味関心を向けないことがありますよね。しかし電気コードのような危険なものに手を出すと、すっとんできて大声を出したり取り上げたりします。赤ちゃんからすると叱られていてもかまってもらえるので繰り返ししてしまうわけです。ですから、危ないことをしてほしくない、安全なもので遊んでいてほしいと思うのであれば、好ましくない遊びをしているときは「だめですよ」の一言で終わらせ、好ましい遊びをしているときにこそ「何して遊んでいるの」と声をかけたり、ゆっくりかまってあげるようにするといいでしょう。

取材協力

渡辺弥生(わたなべ・やよい)

渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。著書に子どもの「『10歳の壁』とは何か? 乗りこえるための発達心理学 」(光文社新書)、「まんがでわかる発達心理学」 (講談社)「中学生・高校生のためのソーシャルスキル・トレーニング スマホ時代に必要な人間関係の技術」(明治図書出版) などがある。

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