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毎日同じ公園、同じ遊びでも心身は発達する? 子どもの成長に必要な遊びって?

ふーちゃん
はあ、我が家も私が自由に乗り回せる自動車を買うべきかしら。でも車って購入だけじゃなくて維持も大変だし、悩んじゃうな……。
イワネン
どうしたのですか? 風花さん。
ふーちゃん
子どもを外で遊ばせるときに毎日近くの同じ公園じゃかわいそうかなと思って。もう少し遠くのいろんな公園に連れていってあげるために、新しい自動車が必要なんじゃないかなって思ったの。
イワネン
なるほど、毎日同じ公園ではお子さんが飽きてしまうかもしれないって考えたのですね。
ふーちゃん
同じところで同じことばかりしていると、刺激が足りなくて発達にもよくないかもしれないじゃない?
イワネン
子育て熱心ですね。でもそれはちょっと考えすぎなのかもしれませんよ。毎日同じ公園に行っていてもお子様たちは楽しそうに過ごしているじゃないですか。本当にあちこち連れていく方がお子様たちのためになるのかどうか、まずは専門家の話を聞いてみてはどうでしょうか。子どもの発達に詳しい心理学の専門家、法政大学文学部心理学科の渡辺弥生教授に聞いてみましょう。

同じ場所で過ごしていても、子どもは毎日たくさんの刺激を受け取っている

毎日同じ公園、同じ遊びでも心身は発達する? 子どもの成長に必要な遊びって?

ふーちゃん
先生、やっぱり子どもたちにはどんどん新しい刺激を与えて、いろいろな体験をさせてあげる方がいいですよね?
渡辺先生
お子様にいろいろな体験をさせてあげよう!と考えるのは、幼児期がいろいろな環境に働きかける探究心が旺盛な時期なので素晴らしいことだと思いますよ。でも、幼児のころはまだ無理をしてあちこち連れ回す必要はありませんよ。というのも、大人からすると毎日同じ場所で同じように過ごしているように見えますが、お子様たちは毎日同じところで同じことをしているように見えて、全然違う刺激を受け取っているんです。経験していることが違うんです。
お子様たちにとっては、この世界はまだまだ知らないこと、わからないことだらけ。葉っぱの色が昨日とは違うことも、日差しがキラキラと輝いていることも、雲が走っていくことも、時間によって影の大きさが違うことも、アリさんが忙しそうに動いていることも、いろいろな色の砂があることも、全部が不思議で魅力的な刺激なのです。だから、同じように穴を掘っているようで、日々「あれっ!?」という体験を重ねて、考えを深めたり新しい感動をしているのですよ。とくにお子様が幼児のうちは「毎日同じ場所に連れて来られて退屈」なんてことは感じていないはずです。
毎日毎日お砂場で同じような動作を繰り返していたとしても、そのときどきで微妙に違う砂の感触に驚いていたり、シャベルの握り方を発見していたりと、目まぐるしい刺激のなかにいるのです。

大人にとっては当たり前のことでも、子どもにとっては未知のこと

毎日同じ公園、同じ遊びでも心身は発達する? 子どもの成長に必要な遊びって?

ふーちゃん
なるほど、私にとっては見慣れた景色であっても、子どもにとってはまだまだ知らないことだらけだったんだ。
渡辺先生
そうなんです。大人はもう木の枝の感触も、よくみかける葉っぱの香りも、だいたいのことがわかっていますよね。それは何年も何十年もかけて積み上げてきた経験があるからなんです。お子様たちはそんな情報を今まさにインプットしているところなんですね。だから大人にとっては面白みを感じられない公園も、お子様たちにとってはまだまだ発掘すべき驚きの種がたくさん埋まっている場所なんです。
ふーちゃん
そっか、じゃあ子どもにとっては毎日同じ公園で遊ぶことは退屈なことではないんですね。でも、正直私は飽きちゃうな。できれば、お父さんやお母さんも、身近な環境の中で「あれ、今日はこんなところに知らない花が咲いているね」とか、「アリさんの行列が今日は長いね!」とか興味を持って働きかけてあげられるといいのですが。
渡辺先生
それでもお父さんやお母さんがつまらないと思ってしまうのでしたら、その時は少し違うところに遠出をしてみましょう!お子様たちは親の感情を敏感に読み取ります。親がつまらなさそうだと感じてしまうと、お子様たちはそれを気にしながら遊ぶことになってしまいます。周りにいる人の存在も子どもに影響を与えますから、お父さんやお母さんが楽しそうで、気分が転換できるところで楽しめることも、子どもにとっては良いことなのです。

毎日同じことをしていてもいい

ふーちゃん
なるほど、場所についてはよくわかったわ。ただもう一つ気になることがあるの。子どもが毎日あまりも同じことばかりして遊んでいることがあるのだけれど、ちゃんと他のことにも興味を持てるようになるのかしら。発達のバランスが悪くなってしまうんじゃない?
渡辺先生
大丈夫ですよ。職人さんの仕事を思い出してください。毎日同じことをしているようで、日々の小さな変化を敏感に感じ取りながら一日一日技術を磨き続けていますよね。職人さんにとっては、毎日同じことをしているという感覚はあまりなく、毎日が挑戦の連続であるはずです。
毎日毎日同じことに熱心に取り組むお子様は、物事のなかの機微を敏感に感じ取って何かの挑戦を続けていますよ。その証拠に、子どもは何回も何回も「やって」と言いますよね。繰り返しの中で、いろいろ新しいことを学んでいるのです。
デジタル的な考え方が進んだ現代では、物事の選択肢が常に多岐にわたっています。そのためできるだけ効率よくチャレンジして、それを合理的に消化していくことがいいと考えられがちです。でも、ちょっと考えてみてください。実は、いろいろな発見や素晴らしい創造力は、同じようなことを毎日無意味にやっているようなところから、切り口や発想を変えて見出されるものがほとんどです。
合理的であることは悪いことではありませんが、自由で一見遠まわりしているような何が目的かわからないような中で、大事なこと見つけていく経験は大切です。お子様が自由に環境に働きかけて、やがては自立して、幸せにたどりつくまでの道を見つけていくような力を育てたいですね。
ふーちゃん
その通りね……。幸せまでの最短距離を急いだって、その先で何をしたらいいのかもわからないし……。
思えば、日々の小さな発見を一緒に喜べることが子育ての醍醐味だった気もするわ。「発達」や「成長」という言葉にとらわれて焦らず、急がず、日々を楽しむことを忘れていたのかもしれないわね。これからは子どもと一緒に楽しむことを忘れないようにしよっと。

取材協力

渡辺弥生(わたなべ・やよい)

渡辺弥生

法政大学文学部心理学科教授。著書に子どもの「『10歳の壁』とは何か? 乗りこえるための発達心理学 」(光文社新書)、「まんがでわかる発達心理学」 (講談社)「中学生・高校生のためのソーシャルスキル・トレーニング スマホ時代に必要な人間関係の技術」(明治図書出版) などがある。

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