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ふれあいが赤ちゃんの学習を促す?「情愛的接触」ってなんだろう

ふーちゃん
日々いろいろな物事を見たり聴いたりしながら成長している赤ちゃん。実は、赤ちゃんを優しく触ってあげることは学習を促す効果があるのだそうです。赤ちゃんの発達を研究されている京都大学大学院の田中友香理先生に教えてもらいました。

赤ちゃんの学習を促す情愛的接触とは

ふれあいが赤ちゃんの学習を促す?「情愛的接触」ってなんだろう

ふーちゃん
先生、赤ちゃんを優しく触ると学習が促されるって本当ですか?
田中先生

はい。親(養育者)が赤ちゃんに優しく触れながら発話するところを見せると、触れなかったときよりも学習が促進されたという研究結果が出ているんです。

学習促進に効果が期待できるのは、情愛的接触という触れ方です。
親子間には大きくわけて3つの接触があります。ひとつは道具的接触。衣服のズレを直したり、姿勢を変えるために抱き起こしたりするときの接触です。触ることのほかに目的があるときに生じる接触ですね。二つ目は刺激的接触。赤ちゃんをくすぐったり揺すったり、つついたりするときに生じる接触です。そして三つ目が情愛的接触。赤ちゃんを包み込んだり、ゆっくり優しく撫でたりするときの接触です。

生まれてすぐの赤ちゃんを母親の胸の上に直に乗せて包み込むカンガルーケアを行うと、赤ちゃんの心拍数や体温が上昇することがわかっています。赤ちゃんは情愛的接触で特別な刺激を受けるんです。
また情愛的接触が多いときの方がコミュニケーション中に赤ちゃんの笑顔が増える傾向があります。赤ちゃんの脳が活性化し、身体の中の感覚と身体の外からの感覚が統合していくようです。

ふーちゃん
では赤ちゃんを撫でながら話しかけると、言葉をよく覚える可能性があるということですか?
田中先生
そうなんです。赤ちゃんの学習は、学習する対象(話しかける親など)が触れることで一層強化されます。人の顔を覚えるときも、映像を見ただけのときよりも対象に直接触れられたときの方が相手をよく覚えているんですよ。
ふーちゃん
情愛的接触が多い赤ちゃんは早くからいろいろなことを覚えていきそうですね。
田中先生
情愛的接触は記憶が定着しやすいだけでなく、赤ちゃんが学ぶチャンスを増やすことにもつながります。
情愛的接触が多い赤ちゃんはオモチャなどを探し回る探索行動や、他人に近づいていく接近行動がより多く見られます。おそらくネガティブな感情が緩和されているためでしょう。

赤ちゃんが学習していること

ふーちゃん
そもそも赤ちゃんは日々どのようなことを学習しているのでしょうか。
田中先生
言語はもちろん、手足の動かし方、声の出し方、物が動く法則、音の響き方などあらゆる外界の刺激が赤ちゃんの学習対象となります。赤ちゃんはある日突然歩き始めるわけではありませんよね。ねんねのころから手足を動かす経験をし、試行錯誤を繰り返しながら身体を支える方法を身につけ、生後1年経つころにようやく最初の一歩が出てきます。
言葉の獲得も同じです。最初の一言が出てくるまでには口の動かし方の練習が必要。物を握るには手の動かし方を知る必要があります。
赤ちゃんは日常生活のなかであらゆることを学習しているんです。

どの時期に効果的なのかは不明

ふーちゃん
情愛的接触は多ければ多いほど、赤ちゃんの学習を促すのに役立つのですか?
田中先生
実は情愛的接触が学習を促進するのには適切な時期があるかもしれず、その詳細はよくわかっていないんです。幼少期や学童期まで効果が期待できるのか、まだわからないんですよ。またどの子にどのような介入をすると学習が促されるのかというのもよくわかっていません。発達障害などにより、触られることを嫌がるお子さんもいますから、推奨される関わり方は人によってさまざまだと考えられます。

赤ちゃんの脳は急成長する時期がある

ふれあいが赤ちゃんの学習を促す?「情愛的接触」ってなんだろう

ふーちゃん
そういえば、赤ちゃんの脳は一定の速度で発達するわけではないと聞いたことがあるのですが、それって本当ですか?
田中先生

そうなんです。敏感期(別名:センシティブ・ピリオド。一般に0歳~6歳ごろまで)と呼ばれる時期は、赤ちゃんの脳が急成長するんですよ。
一般的に日本人は英語のLとRの発音を聞きわけることが苦手です。けれど生後6カ月から8カ月の時期は、日本人の赤ちゃんもアメリカ人の赤ちゃんも聞き分けに能力差は見られないんです。ところが生後10カ月を過ぎると、日本人の赤ちゃんはLとRの音韻の聞き分けができなくなる。人間の言語能力がこのころに母語に特化していくためなんです。

置かれた環境によって獲得できる言語が異なるように、言語獲得は環境の影響を強く受け、しかも親の関わり方によっても獲得できる内容が異なります。
子どもは1歳から2歳ごろ言語爆発と言われる現象が始まり、ときには1日で数十個の言葉が出始めます。言語爆発の時期とその程度には個人差がありますが、生後2年目から発語が出てくるよう、赤ちゃんは、乳児期に様々な音を聞きわけ、母語に特化した音のパターンを学習していると思われます。そのような意味では、赤ちゃんのころから、他者に触れられながら他者の声を聴くという経験を積み、言語を学習するための土台をつくっておくことは、大切ではないでしょうか。

ふーちゃん
赤ちゃんの学習過程ってとっても面白いんですね。先生、ありがとうございました。

取材協力

田中友香理

田中友香理

関西大学心理学研究科 日本学術振興会特別研究員RPD
発達心理や発達認知神経科学を専門とする。
著書に『発達科学から読み解く親と子の心』(ミネルヴァ書房)がある。

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