お宮参りって何するの?
- 初めての子育てでは、日本古来の風習に戸惑うことがあります。お宮参りや、お食い初め、節句やお祭り……。何をしたらいいのかしら。
- マナーや作法だけでなく、その伝統が持つ意味を知れば楽しんで参加できるかもしれませんよ。伝統行事に詳しい人に聞いてみましょう。東京都北区にある七社神社の禰宜(ねぎ)、和田隆之さんが協力してくださいました。
- ではさっそく、赤ちゃんが生まれて最初の一大イベント「お宮参り」について教えてもらいましょう!
お宮参りはムラへのお披露目行事だった
和田さん
お宮参りの記録は室町時代から残っています。由緒も意味も諸説ありますが、もともとは武家の習俗だったようです。
かつて日本には産の「忌み」がありました。死と同じように出産も穢れであり、お産のあった家には近づいたり火をもらったりしてはならないとされていたのです。
地域によってこの時期は異なるのですが、おおよそひと月程度でこの忌みが明けると、赤ちゃんをムラに受け入れてもらうためにお披露目をしました。これが、お宮参りの起源と言われています。ムラはその子が生きる共同体。ムラの特別な場所である神社でお披露目をすることでみんなに存在を認知してもらうのです。
お宮参りは31日? 33日?
現在、お宮参りは男児の場合は生後31日、女児の場合は生後33日で行うことが多いようです。しかし地域によって風習は異なるため、できるだけ伝統に則った形式でお宮参りをしたいと考えているのであれば、近場や地元で一番大きな神社などに相談してみるといいでしょう。
医療技術が発達した現代では無事に育つ赤ちゃんが増えましたが、昔は生後まもない赤ちゃんは亡くなってしまうことが少なくなく、「魂の場所が定まっていない」と考えられていました。
31日ごろはこの魂が身体の中に静まり、一段落するころ。神社に詣で魂を安定させ、ムラへのお披露目はこのころにようやくできるようになると考えられていたようです。
時代によって移り変わるお宮参り
ムラへのお披露目行事として始まったお宮参りですが、現代にはムラのような共同体はほとんど残っていません。
しかし核家族が増えた現代では、赤ちゃんにとってのおじいさん・おばあさんを含めた広い意味での家族も一つのコミュニティと考えることができます。ですから赤ちゃんに繋がりのある親戚が集まってお宮参りをすることは、現代のお宮参りとしては充分意味をなすことです。
そうすると、できるだけ大人数でお宮参りをした方がいいのかと思われるかもしれませんが、私が見ている範囲ではお父さん、お母さん、赤ちゃんだけのご家族でいらっしゃるケースも少なくなくありません。少人数でも赤ちゃんの健やかな成長を願うことはできますので、あまり深刻に考えずに参加できる人がいらっしゃれば良いと思います。
平成12年頃の調査では、8割ほどのご家族はお宮参りをしていたようです。当時は神社で祈祷をすることが一番のメイン行事。参加者全員で赤ちゃんの健やかな成長を願い、祈祷をしてから、食事をし、それから写真館で撮影をすることが多かったようです。写真撮影については、まもなく写真館ではなくスナップ写真へと変化していきました。
最近の傾向を見ていると、プロのカメラマンに同行してもらい境内で撮影される方が多いようです。なかには写真だけを撮ってお参りをされない方もいらっしゃいますが、これでは少し寂しいかもしれません。祈祷を上げるのが難しいという方でも、通常のお参りはぜひされてみてはいかがでしょうか。
※カメラマン同行に関しては禁止されている場合もあります。参拝される神社へ事前に確認を行ってください。
お宮参りは正装をしなければいけない?
東京都神社庁では正装でのお宮参りを推奨していますが、そうでなければならないという明確なルールはありません。神社によって対応はまちまちだと思います。
七社神社では、お一人おひとりの気持ちを尊重することにしています。服装に何かお願いをすることはありません。
初穂料・玉串料については熨斗に入れることが推奨されていますが、これにも明確なルールはないと思います。ただし、お札が丸見えになった状態でお供えするのも神様に失礼ですから、そのままお持ちになった場合はこちらで熨斗に入れています。
しきたりについては、地域や神社によって異なるので、お参りする先で相談されますことをおすすめします。
取材協力
和田隆之(わだ・たかゆき)
東京都北区にある七社神社の禰宜。七社神社は古くから西ヶ原村の鎮守として奉祀されてきた。お祀りされている七柱の神々のうち、天児屋根命は祝詞の神とも言われ、安産や厄除けなど種々の祈願を受け付けている。親子の狛犬をモチーフにした愛らしいお守りが人気。戦災を免れた境内には歴史的に貴重な物品が残っている。