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母の白い手袋

「ひなまつり」と聞いて思い出すのは、子どもの頃、実家の応接間に飾られていた雛人形のこと。
子どもの私にとって見上げるほど大きな7段飾りの雛人形は、厳かで圧倒されるほど立派なものだったけれど、お内裏様やお雛様をはじめ3人官女や5人囃子、右大臣、左大臣たちも、みんな細い目と白い無表情な顔をしていて、子どもながらにその顔が怖くて1人で応接間に入るのを嫌がっていた時期がありました。
もともと小心者で怖い話も大の苦手。そんな私はその後も日本人形の雰囲気がどうしても好きになれず、実家だけでなく祖父母の家で飾られていた雛人形のそばにも、小さな頃はあまり寄り付こうとしませんでした。

母の白い手袋

そんな私が10年前に娘を出産したあと、初節句のお祝いにと両親が私の娘に雛人形を贈ってくれることに。専門店には何百という雛人形が並んでいましたが、たくさんいる人形の中から私が「あ、この子!」と惹きつけられたのは、古風な雰囲気の中に桜色や山吹色など春の息吹を感じるような、色使いが特徴的な十二単をまとったお雛様でした。
親にとっては自分の子がいちばんかわいく見えるというように、私が選んだお雛様も不思議と本当に美しく、その場にいた人形の中でまさにいちばんと思えるほどかわいい顔をしているのです。
一目惚れしたお内裏様とお雛様は私にとっては我が子のようにかわいくてしかたなく、我が家のリビングに飾っている期間は毎日「おはよう」「今日も素敵だね」と声をかけてしまうほど、私は雛人形が大好きになってしまいました。
そして、我が子のようにかわいい雛人形を愛でるたびに、私が昔怖がっていたあの7段飾りの雛人形を、両親……とくに母がとても大切にしていた姿を思い出すのです。
毎年、白い手袋をして大事そうに箱から出し、7段無事に飾ることができたことに目を細め、毎日丁寧にほこりをはたいていた母の嬉しそうな顔を。

母の白い手袋

娘が我が家の雛人形をどう感じているのかはわからないけれど、毎年、娘の健やかな成長を願いながら愛おしく飾り付けをする私たち親の姿が、子どもの頃の私の心に残ったように、娘の中にも少しでも残ったら嬉しいなと思っています。
ひなまつりは娘の成長を願う大切な日ですが、それと同時に、私自身も両親の愛情に改めて触れるような、そんな特別な日でもあります。
住宅事情もあり、私の7段飾りの雛人形を娘に引き継ぐことはできなかったけれど、ひなまつりの季節になると両親に贈ってもらった娘の雛人形を眺めながら、娘と私、私と両親、そして、娘と私の両親の、家族のつながりを深く感じることができるのです。

今年も、久しぶりに会える大好きなお雛様たちに、娘の成長の報告とともにたくさんの「ありがとう」と「大好きだよ」を伝えて、家族でお祝いできたらと思います。

執筆者プロフィール

LICO(リコ)作家/子育てアドバイザー

LICO(リコ)

「子どものこころが穏やかに育つ魔法の育児法」のタイトルで40000人以上の読者を持つ、京都在住アメーバオフィシャルママブロガー。
「子育てを大変だと感じる本当の理由」「夜泣きをするきみへ」「ママの毎日」などの記事が爆発的な人気となり、シェアがネット上で120万を超えるなど、その等身大の育児観は圧倒的な共感を呼ぶことに。
各種キュレーションの2015年上半期アクセス数ランキングにおいて、ブログ記事が殿堂入りを果たす。

ブログを通じてつながったママ達へのアドバイスが話題となり、各方面への講演会出演依頼が続出。
2017年4月現在、6歳の娘、4歳、2歳の息子を育てながら、講演活動、育児雑誌や育児サイトなどへの記事連載など幅広く活動している。

著書に『おだやかママの幸せ子育て法』(シリーズ2冊)、 『不安なあなたがゆっくりラクになるメッセージ』(すべて主婦の友社刊)。

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