立冬は「あられ・おせんべいの日」。お子様と一緒に寒くなる季節を楽しもう!
- まもなく立冬ね。寒さが苦手な私にとっては覚悟を決める日という感じだわ……。
- 冬が始まることは楽しみが増えることでもあるんですよ。
例えば立冬の日(2024年は11月7日)は、全国米菓工業組合が制定した「あられ・おせんべいの日」です。冬が始まるこの日にはぜひ、寒い日はこたつに入ってあられやおせんべいを味わう楽しみがあるということを思い出してください。
- なるほど。「あられ・おせんべいの日」と聞くと、いつものおやつ時間もなんだか特別に思えてくるわね。
- 実は他にもこの季節を楽しむ方法ってあるんですよ。和文化研究家の三浦康子先生に教えてもらいました。
教えてくださったのは……
和文化研究家 三浦康子先生
立冬には、決まった楽しみ方がない!?
- 先生、まずは立冬の楽しみ方を教えてください。
- 立冬には、冬至のようにお風呂に何かを入れたり特別なものを食べたりするような決まった楽しみ方はないんです。けれど立冬の日の近くにある「亥子の日」には、冬の無病息災を願う行事がいくつかあります。2024年は偶然にも立冬の日と亥子の日が同日になったので、ここでは亥子の日の楽しみ方を紹介しますね。
こたつ開きをしよう
亥の子の日は、亥の月(旧暦10月。新暦では11月)の最初の亥の日のことで、「炉開き」をする風習があります。古来、亥は火を制する水に関係するとされたため、亥の月亥の日に火を使い始めると火事にならないといわれました。
そのため、家の囲炉裏で火を使い始める「炉開き」はこの日に行われてきたのです。昔は家の中に囲炉裏があり、炉端で調理をしたりしていました。また、囲炉裏の上にやぐらを組み、布団をかけてこたつにしたので、「こたつ開き」ともいいます。
現代は、こたつに限らずストーブなどの暖房器具を出す日として親しまれています。乾燥しがちな冬の間、火事が起こらないことを願って、亥の子の日に「こたつ開き」をしてみてはいかがでしょう。
お子様が触っても安全なように、早めに暖房器具の手入れをしてもいいかもしれませんね。
季節のお菓子を食べよう
古来西日本では、亥の子の日に亥の子餅を食べる文化がありました。多産な猪にあやかり、うり坊(猪の子ども)の形をした餅を食べることで無病息災や子孫繁栄を願います。近頃は関東地方でも亥の子餅の販売をするところが増えてきました。愛らしい形をしたものが多いので、ぜひお気に入りの亥の子餅を探してみてください。あられやおせんべいとともに、亥の子餅も味わうとより一層冬の風情を感じられるはずです。
- お菓子から季節を感じるってなんだかいいですね。まだお餅を食べられない小さなお子様には「岩塚のおこさませんべい」を食べさせたら、みんなで一緒に楽しめるわね。
冬ごもりの時期をのんびり楽しむのも季節の味わい方
- 田んぼと一緒に生きてきた日本人にとって、立冬から先は冬ごもりの時期でした。
稲刈りを終えると、山に帰る田の神様を送る11月10日ごろ(旧暦10月10日)の「十日夜」、新米を神様に供える11月23日の「新嘗祭」をします。そして、12月8日には「事納め※」といって道具を片付けます。この日は田に関する道具を片付けるだけではなく、暮らしに欠かせない針供養も行いました。さらに無病息災を願う「お事汁」を飲み一年の農作業を終えるのです。その後は寒さのなかで無理に動くようなことはせず、じっとこもって力を蓄えていました。そしてお正月を迎え、また新たな年の豊作を願ったのです。
- 家にこもってゆったりと過ごすことも伝統的な冬の楽しみ方なのね!無理に動くことはない思うとなんだかほっとするわ!
※12月8日は、年神様に関する事を始める「事始め」の日でもあるので、地域によっては「事始め」ともいいます。
こたつであられやおせんべいを食べるのは日本の原風景。お子様とゆったり時間を楽しもう
- ですから、全国米菓工業組合が立冬の日を「あられ・おせんべいの日」に制定したというのはとてもいいアイデアだと思いました。
寒い冬にこたつに入っておせんべいやあられを食べることは日本の原風景の一つといえるでしょう。今年の冬もお子様と一緒にのんびりゆったりした時間を楽しんでいただきたいと思います。
取材協力
和文化研究家 三浦康子
古を紐解きながら今の暮らしを楽しむ方法をテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、Web、講演などで提案しており、行事を子育てに活かす「行事育」提唱者としても注目されている。All About「暮らしの歳時記」、私の根っこプロジェクト「暮らし歳時記」などを立ち上げ、大学で教鞭をとるなど活動は多岐にわたる。著書『子どもに伝えたい 春夏秋冬 和の行事を楽しむ絵本』(永岡書店)、監修書『季節を愉しむ366日』(朝日新聞出版)ほか多数。