クリエイティブディレクター・佐藤ねじさんが考えた、子育てをもっとラクして楽しむヒント
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- 我が子は愛おしいけれど、正直、毎日言葉の通じない相手と遊ぶことに疲れてしまうことがあるわ。何かもっと我が子との時間を楽しむ方法ってないかしら。
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- お子様と過ごすひとときに、さらに「笑い」が増えると幸せでしょうね。日常にちょっとしたアイデアを取り入れることで、楽しみは随分と増えるかもしれません。著書 『子育てブレスト: その手があったか!67のなるほど育児アイデア集』(小学館)でユーモラスな子育てのヒントを紹介しているクリエイティブディレクターの佐藤ねじさんにお話を聞いてみました。
ご協力いただいたのは
プランナー/クリエイティブディレクター
佐藤ねじさん
絵本の読み聞かせを録音して再利用。かけがえのない思い出にもなる
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- 『子育てブレスト』(パートナーの佐藤蕗さんと共著)は0歳〜11歳のお子様との時間を「ラクして」「楽しむ」ためのアイデアが満載の一冊です。ユーモラスな「遊び」のヒントが詰め込まれていますが、特に佐藤ねじさんがおこせんユーザーにおすすめしたい遊び方はありますか?
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僕は絵本の読み聞かせを録音して再利用するアイデアが特に気に入っています。おこせんユーザーの皆様は、多くの方がお子様に何度も同じ絵本を読み聞かせしてあげていることでしょう。そのうちの一回を録音してまた「読んで」と言われたときに再生するんです。
絵本のなかには結構ストーリーが長いものもあって、疲れているときに「読んで」と言われると困ってしまうことがありますよね。そんなときにこの音源は大活躍します。
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- 録音で、子どもは満足しますかね……?
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うちの子どもの満足度は、読み聞かせしているときとあまり変わりませんでした。どうやら子どもは親と一緒に並んで、あるいは抱きかかえられた状態で絵本を眺めるということが重要なようなんです。
子どもに対していい加減な対応しているように思われるかもしれませんが、子育ては毎日続く終わりのない営みなので、できるときには手を抜くことも必要なのではないかと思っています。
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- 確かに、子育てを毎日全力で頑張るというのは現実的ではありませんよね。
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それに想像以上に音の記録というのは楽しいんですよ。読み聞かせをしているときに入った笑い声や鼻息、ちょっとした生活音などが妙に思い出になるんです。
スマホが普及している現代では動画を撮る機会は多いと思うのですが、音だけの思い出も案外味わい深くて面白いものです。
また、名作の絵本などはお友達のご家庭にも同じものがあることが多いですよね。この音源を共有したり、交換したりしてみてもなかなか面白いですよ。
できるだけ負荷を減らして楽しく過ごせるよう、第3の道を探す
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面白いアイデアですね。私は著書で紹介されていた「人間レール」が印象に残っています。こちらはパートナーの佐藤蕗さんの発案ですよね。親は寝転んでいるだけで、子どもが勝手に楽しんでくれる素晴らしいアイデアです。
佐藤ねじさん・蕗さんのアイデアはどのように生まれてくるのですか?
▲人間レールの様子
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これは、子どもは遊びたいけれど親は寝ていたいという両者の希望を両立する方法を考えた末に生まれたものです。
子どもはやっぱり親と一緒に遊びたいんですよ。できることなら、僕たちもそれに応えてあげたい。けれど時間にも体力にも限りがあるなかで、いつも要望に応えてあげられるわけではありません。そこで第3の道を考えることにしたんです。そうすると子どもは楽しく、親はラクをできる方法がみつかりました。
ちなみにこの背中やお腹のレールは、プリントをしなくてもOK。色のついたテープなどをTシャツなどに貼れば誰でも簡単につくることができます。
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- ラクで楽しい、がキーワードなのですね。
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- うちでは下の子が6歳となり、僕の子育ての記憶も少しずつ薄らいできているのですが、子どもが0歳から3歳のころって毎日異常に疲れていたと思うんですよ。おむつを替えたり、よくわからない日々の対応をしたりしているうちに時間と体力がなくなっていく。だからできるだけ負荷を減らして楽しく過ごす方法を考えるようにしていました。
子どもは「役割」が大好き
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- 佐藤ねじさんが子育てにおいて心がけていたことはありますか?
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心がけてというほどのことではないですし、パートナーは別の考えを持っているかもしれませんが、親子は主従の関係ではなくチーム仲間だと思っています。幼くても子どもも一人の人間として、役割を持っていると考えているんです。
まだ発語もない子に「役割」があると考えるのは難しいかもしれませんが、家庭のなかに活力をもたらしてくれれば、それはもう子どもは役割を果たしているといえるかもしれません。
だんだんコミュニケーションが取れるようになってくると、大人は気が付かなかったことを教えてくれるなど、立派に役割を果たしてくれるようになります。
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- 子どもは親が世話をするだけの一方的な存在ではないということですね。
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- コミュニケーションがしっかり取れるようになってきたら「役割」は具体的にしていくといいかもしれません。実は子どもは「役割」を果たすことが大好き。任務を与えると喜んで実行してくれます。「◯◯大臣」「◯◯担当」などと呼んであげると、新しい遊びが生まれるかもしれませんよ。
1歳前後は、ベビー向けせんべいが頼みの綱だった
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- 豊富なアイデアで子育てを楽しみ、困難を乗り越えている佐藤さんですが、「おこせん」などのベビー向けせんべいに頼るシーンはありましたか?
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- ベビー向けせんべいはよく食べさせていましたよ。というか、外出時には必需品でしたね。とくに1歳前後の子を連れて公共交通機関を利用するときは、おせんべいを食べさせたり、動画を見させたりするぐらいしか、静かにしてもらう方法はありませんでした。もう少し年齢があがればさまざまな「遊び」を提案することもできるのですが、複雑なコミュニケーションが取れないうちは他にあまり手段がありません。ベビー向けせんべいには本当にお世話になりました。
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- 佐藤さんほどのアイデアを持つ人であっても、移動のおともはおせんべいだったのですね!
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- そうですね(笑)。やっぱりお米でできているので「ご飯の代わりにもなるものだし、いいかな」と思えて安心できたんです。
どのように成長していくのかがわからない乳幼児期に「ハズレ」の選択はあまりない
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- 日々、子育てを頑張っているおこせんユーザーの皆様にメッセージをいただけますか。
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今は情報が溢れている時代なので、本当に多くの「子育てのヒント」や「指針」が示されていると思います。けれど乳幼児のときって、まだ子どもがどのように大きくなっていくのかあまり分からないですよね。何かを選んでも、それがどのように影響するのかは大きくなってみるまで分からない。だからこそ「ハズレの選択」ってあまりないのではないかと思っています。
SNSを見ているととても素敵な子育てをしている方々が目に入りますが、そうでない選択をしている自分や、そうでない状況を「ハズレ」だと感じる必要はないんですよね。安全に一日を過ごすことができれば、あとは何の問題もないはずなんです。理想の子育てを掲げてその通りにならない自分を責めるようなことはせず、常にたくさんの逃げ道を作って、この子育てという営みを続けていくことができればいいのではないかなと思います。
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- ありがとうございました!
取材協力
佐藤ねじ
1982年生まれ。プランナー/クリエイティブディレクター。
2016年ブルーパドルを設立。代表作に「隠れ節目祝いbyよなよなエール」「ボードゲームホテル」「アルトタスカル」「0歳ボドゲ」「佐久市リモート市役所」「小1起業家」「劣化するWEB」など。著書に「子育てブレスト」(小学館)など。