人見知りが激しい子はどうやって育てればいい?
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- 今度、子どもを連れて親戚の家に遊びに行くのだけれど、ちょっと心配していることがあるの。最近子どもの人見知りが激しいから、大泣きしてしまうのではないかと不安なのよ。
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- 人見知りは成長の証だとはよく言いますが、大泣きされると困ってしまうことがありますよね。
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- そうそう。何か人見知りをやわらげる方法ってないのかしら。
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- 保育・子育てに詳しい専門家に聞いてみましょう。元白梅学園大学子ども学科准教授の松永静子先生にお話をうかがいました。
どうして人見知りをするの?
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うちの子はどうしてこんなに人見知りが激しいのでしょう?
人見知りが激しい子とそうでない子との間にはどのような違いがあるのですか?
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「赤ちゃん学」の研究をされていた故・小西行郎先生の研究によれば、子ども自身の特性によるものではなく、人とコミュニケーションを取ろうとする赤ちゃんの気持ちの表し方による違いなのです。
赤ちゃんは、生後6ヵ月ごろから人の顔を区別できるようになります。例えば、いつもお世話をしたり相手をしてくれたりする人とそうでない人の違いがわかるようになります。まだ言葉を発することはできませんが、身近な人に対して表情で気持ちの伝達をしようとするようになるわけです。
一方で、知らない人に対しては「あなたのことは知らないよ」「誰かわからないよ」と相手に応じて表し方を変えるようになります。その表し方はお子さんによって様々で、やや緊張した表情をする子もいれば、大声で泣く子もいます。
どのお子さんも成長する過程でコミュニケーションを取ろうとするのですが、その中でよく泣いてしまう子の方が目立つため、その子は「人見知りをする子」というイメージで見られてしまうのですね。
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- では、人見知りをすること自体はまったく普通のことなんですね?
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- そうなんです。赤ちゃんも一人の人間として成長していくのですから、当たり前の行動だといえるでしょう。ちょうどその頃から他者に対する愛情表現も豊かになってきて、ママやパパがそばを離れると後追いする姿も多くなります。人見知りも後追いも成長の中でみられる一時的なものなので、個人差はありますが、やがて落ち着くときがやってきます。
泣き止ませようとすると、ますます大泣きしてしまうかも
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- うちの子は、ちょっとでも知らない人に会うと大泣きするタイプみたいなんです。
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そうすると、相手に失礼なことをしているのではないかとママやパパの方が焦ってしまうかもしれませんね。でも、焦って赤ちゃんを泣き止ませようとしてもなかなか泣き止まないでしょう。赤ちゃんは自分に注目が集まっていることで不安を感じ、ますます激しく泣いてしまいますから。
そんなときはまず「最近、人見知りをするようになって」と一言断り、やんわりとあやしながら、相手との和やかな会話を続けてみてください。ママやパパが楽しそうに話しているのを見ると、赤ちゃんが安心して泣き止むことがあります。
「人見知り」で泣き出したときは、赤ちゃんから目をそらしてみよう
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予め会う相手がわかっている場合は、人見知りが始まっていることを伝えておきましょう。
その場で相手にお願いすることとしては、まずは赤ちゃんから少し目をそらせてもらいましょう。目と目を見合わせると赤ちゃんはさらに緊張してしまうことがあります。それから、あやしたり、声をかけたりするのは様子を見てからにしてもらうと良いでしょう。
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- 赤ちゃんを緊張させないことが大事なんですね……!
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- そうなんです。それから、赤ちゃんの話題にこだわらず、いつものように和やかに話すことも大事です。一旦赤ちゃんのことは気にしないふりをしてください。赤ちゃんが「この人はママやパパと親しい人なのだ」と感じられれば、徐々に人見知りをしなくなるかもしれません。
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- きっと赤ちゃんも相手がどんな人なのかと思ってみているのでしょうね。
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そうですね。それから赤ちゃんの好きなおもちゃなどがあれば、おもちゃで遊んであげるとおもちゃに関心を向けるので、人見知りの相手から目をそらすことになります。その場合でも、少しずつ赤ちゃんとの距離を縮めながら、赤ちゃんの様子を見て遊んでみると良いでしょう。
これらの方法がすべてではないですが、赤ちゃんがコミュニケーションを取ろうとする手助けにもなり、不安を和らげることになります。ぜひやってみてくださいね。
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- どれも難しいことではないから、やってみる価値はありそうね。
保育士も人見知りされる
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- ちなみに、保育のプロである保育士であっても、初対面の赤ちゃんには人見知りをされるのです。例えば、保育園の0歳児クラスでは、いつも関わってくれる先生以外の保育士が抱っこしようとすると大声で泣かれてしまうという場面がよくみられます。人見知りは成長の証なので、過度に心配することは一切ないですよ。ですからどうか、人見知りをされてしまっても、お子さんの人見知りが強い場合でも周りの大人はあたたかく見守ってあげましょう。
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- それは励まされる話ですね。親戚にも伝えておきます。
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- 親戚や友人であれば、直接会う前にビデオ通話などを通して何度か相手の顔をお子さんに見せて、声を聞かせておいても良いかもしれません。こちらも必ずしも上手くいくとは限りませんが、赤ちゃんが相手のことを少しでも覚えていたり、知っている人と思ってもらえる可能性があります。
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- 人見知りをすることは当たり前のことなのだと知って安心しました。ありがとうございました。
先生からのメッセージ
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人見知りはコミュニケーションの発達の始まりであり、赤ちゃんが周りの人と関わろうとしている証なのです。人見知りもひとつの成長だと前向きに捉えて、育児を楽しんでくださいね。
また、まだ言葉を交わすことができなくても、身近な人々とのコミュニケーションは赤ちゃんにとってはとても大切なものです。授乳やおむつ交換など日々の育児の中でも、「今からおむつをかえるね」「すっきりしたね、気持ちがいいね」「お腹すいたね、ミルク飲もうね」などと、できるだけ優しく声をかけてあげると良いでしょう。現代の子育ては家事や仕事との両立などますます忙しさが増しているかと思いますが、ぜひ、赤ちゃんに色々語りかけてあげてください。
取材協力
松永静子(まつなが・しずこ)
白梅学園大学子ども学研究所嘱託研究員。乳児保育Labo&Advisory 乳児保育実践コンサルティング及びアドバイザー。東京都区内の公立保育園に31年勤務、その後白梅学園短期大学準教授などを経て、現職。雑誌の赤ちゃん相談のコーナーの執筆やすくすく子育て(NHK)「赤ちゃんの泣き」特集などに出演。